減価償却という言葉を耳にしたことがあっても、それが具体的にどのようなもので、税務上どのように計上したら良いのか、正しい知識を持っている人はあまり多くないでしょう。
ここでは、減価償却が意味や減価償却費を計算するときのポイント、さらに減価償却を行う目的やメリットなどについて詳しく解説していきます。
企業が所有している資産の中には、固定資産のように長年にわたって所有することを前提に購入するケースがあります。
このような資産については、支払った金額をすべて購入した年度に費用として計上するわけではありません。
耐用年数に応じて資産価値が徐々に減少するのもとし、その減少分を毎年少しずつ費用に計上するという方法を用います。
これが減価償却であり、毎年の資産の減少分が減価償却費です。
減価償却できる資産は10万円以上の有形固定資産で、代表的なものに工場などの建物や車両、機械、パソコンなどがあります。
また、無形固定資産であっても、特許権や商標権、ソフトウェアなどは減価償却ができます。
一方で、土地は建物と違って時間が経過しても価値が減少するわけではないので、減価償却の対象とはなりません。
同様の理由で、絵画や古美術品なども減価償却はできません。
減価償却は、法人税を企業から公平に徴収するのが目的です。
たとえば、耐用年数20年の高額な機械装置を購入したとしましょう。
その費用をすべて購入した年度に計上してしまうと、残りの19年は費用が発生せずに利益のみが計上されるため、納める法人税が多くなってしまいます。
しかし、減価償却を行うことで、20年間にわたって一定の減価償却費を計上することができれば、納める法人税の額は少なくなり節税につながります。
また、購入年度に全額を費用として計上してしまうと、一時的に利益が圧迫され、企業によっては赤字に転落してしまう可能性も否定できません。
赤字により信用力に傷がつくことで、銀行から融資を受けられなくなってしまうこともあるでしょう。
このような悪影響を避けることができるのも、減価償却を行うメリットです。
減価償却費を算出する方法は、定額法と定率法の2つです。
定額法では、減価償却費を「取得価額×定額法償却率」で算出します。
定額法償却率は、基本的に1を耐用年数で割った数値なので、取得価額を耐用年数で割った金額と同じです。
取得価額50万円、耐用年数2年であれば、定額法償却率は0.5となるので、50万円×0.5=25万円が減価償却費となります。
一方、定率法による減価償却費の算出方法は「未償却残高×定率法償却率」です。
購入年度では、未償却残高が購入価額とイコールになります。
定額法では減価償却費が毎年一定ですが、定率法では購入した直後ほど減価償却費が大きくなります。
減価償却は、資産価値が徐々に減少するという前提に立つため、減価償却費を長期間にわたって分割して計上できます。
もちろん会計作業の手間は増えてしまいますが、節税効果などメリットも大きいので、積極的に利用することをおすすめします。